たまには運動しないといけないな…！
で、唐突にさっちんと霧生ちゃんの小話を書きたいなぁと書いてたら、書きあがりました
ちょうショートショートでオチもへったくれもないですが、まぁ暇つぶしがてらどうぞ
遠くに聞こえる、秋を告げる鈴虫達の輪唱
僉神と呼ばれる神が創ったこの樹海にも、四季というモノがあるらしい
こうして夜の見張り番をするのも、これで何百回だろうか
「退屈そうですね、霧生」
渡り廊下の闇の中から聞こえた、男の声
声のした方へ目だけを向ければ、見知った顔がそこにあった
死んだ筈の俺を、生へと縛りつけた男
「…今日の夜番<ヤバン>は俺だけの筈だぜ？」
「鈴虫の鳴く声に誘われましてね…。
こう言った静かで穏やかな夜も久しぶりでしたから、つい」
そう言いながら、旦那は俺の隣に腰掛けた
旦那の言う通り、今夜みたいな静かで穏やかな夜も久しぶりだ
いつもなら毎晩毎晩、得体の知れねぇ化け物どもが押しかけてくるか
或いは神さんを狙ってくる輩が来るからだ
「今夜は満月ですか…」
「…そういやそうだな…」
夜空を見上げる旦那につられて、俺も夜空を見上げた
深い藍色の空に１つ、白く輝く満月
こうやってのんびりと月見をするのも、何年…いや、何十年ぶりだろうか
「さて、折角の月見日和だ…どうです？一杯」
そう言うと、旦那は何処からか酒と杯を二杯取り出した
いったい何処から出したのかと聞いても、旦那はいつも「さぁ、何処からでしょうね」などと言ってはぐらかす
初めて出会ったあの時も、旦那は俺に多くは語らなかった
まぁ俺自身も知ろうとはしないし、はぐらかされても追求はしなかった
知りたい気持ちはあるが、面倒事に巻き込まれるのは…もううんざりだからな
「しょうがねぇな…って、ソイツは俺が取っておいた大吟醸の…！！」
「この酒は月見酒にもってこいだと言っていたでしょう？
今夜は見事な満月に、久々の穏やかな夜ではないですか…。
こんな夜でこそ、この酒をゆっくり味わうにはもってこいだと思いますが？」
クスリと笑みを浮かべて杯を差し出す旦那に、俺は反論の言葉も出なかった
旦那の言う通り…こんな夜にこそ、この酒を飲むに相応しい
「…ハッ、さすが旦那だ。抜け目のねぇ事で…」
「褒め言葉として頂いておきますよ」
旦那はそう言うと、俺に杯を渡して酒の蓋を開いた
鈴虫の鳴き声と共に、トクトク…と、酒が注がれる音
自分の持っている杯を覗けば、透明な水面に反射する満月
「今度は月見団子を用意しなくてはいけませんねぇ」
「飾っててもあの双子の片割れがつまみ食いするだろ」
「大丈夫ですよ、彼女にはチョコのお菓子を大量に与えておきますから」
「…アンタもだいぶあの嬢ちゃんの扱いに慣れてきたな…」
「好きなモノを把握していれば、大体の対処は出来ますよ。
君の時と同じようにね」
「…俺とあの嬢ちゃんを一緒にすんじゃねぇ、不愉快だ」
「おや、それは失礼」
クスクスと笑いながら酒を煽る旦那を横目に、俺も杯に口をつける
とっておきの酒に、鈴虫が鳴く穏やかな月夜
…こんな夜も、悪くはない
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霧生ちゃんはとりあえずさっちんには頭が上がらなければいい（笑）
さっちんはたぶん誰に対しても一枚上手な気がするな
とりあえず晩酌とか酒が大好きな年長組なのでした～
あ、因みにこの時のさっちんは着流しですから…！（ぇ）
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